2013.04.24 能生白山神社春大祭
毎年4月10日に開催される「糸魚川天津神社春大祭 )」に続いて、2週間後に開催されるこのお祭りも是非一度観てみたいと強く思っていた。 数日前から4月24日は雨と予報されていたが、予定は変えることができない。 わたし以上に、雨だからと言って止められない多くの人達がいるのだろう。 糸魚川を発ったときは雨。風もあり、気温も低く感じられたが、浦本を過ぎると風は収まり、雨足も緩くなったように感じた。 頚城山塊(くびきさんかい)の影響で、糸魚川と能生の天気はだいぶ違うらしい。白山神社辺りはさらに風がはいりにくそうな尾山(おやま:鎮守の森)の影に在る。 9時過ぎに神社に近づくと笛と太鼓の音。 夏の海水浴客のための無料駐車場に車を置き、弁天岩を眺めたあと、神社境内に向かった。 |
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すでに御神嚮(ごじんこう)と呼ばれる獅子舞が始まっていた。 御神嚮の前には「七度半の使い」と呼ばれる儀式が午前8時頃から行われる。「神々のお出ましをお願いする」口上と所作を七度に渡って繰り返す。これでようやく神様の出発が叶うという。 |
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先頭の露払いの獅子舞は笛と太鼓に合わせ 力強く舞う。 一体の獅子を二人で纏い、約20名の若衆達が 順次入れ替わりながら舞い続け、 行列を先導していくのだ。 |
続いて3台の神輿。一の神輿(いざなぎのみこと)、二の神輿(ぬながわひめのみこと)、三の神輿(おおなむちのみこと)である。 |
旗、花竹、刺又、槍、道具箱などが続き、そのうしろに稚児の列が続く。 |
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動きのあるのは先導する獅子頭一体のみで、うしろは静やかに、厳かに、神々を乗せて進む。 御神嚮は、約3時間もの時間をかけて続けられ、200メートル足らずの境内を2廻り半する程度のスローペースである。 正午になる頃、ようやく御神嚮打ち止めとなり、神輿は所定の位置に留まり、「お走り」の待ち体制にかかる。 境内はそわそわしだし、神輿が上下に揺さぶられジャラジャラと鳴り響き、張り詰めた雰囲気に包まれる。 スタートすると見せては中止することを何度も繰り返すので、境内は息を詰めるのとため息にあふれることが10回以上。 いよいよ三の神輿の合図とともに一気に走りだし、獅子は拝殿に、稚児は楽屋に、神輿は御旅所(おたびしょ:お祭りのために神様が仮にとどまるところ)になだれ込む「お走り」である。 「お走り」の写真は、息をのんでいるうちに過ぎてしまう、あっという間の出来事だった。下記のURLで写真がご覧になれます。 能生白山神社春大祭「お走り」→ |
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「お走り」が終わると、拝殿と御旅所の間に橋を渡し、神様へのお供えを運ぶ「供神撰(きょうしんせん)」。6名の社人が3回の往復で楽の音に合わせてお供えをする。 これが終わると、祭礼の準備が整ったことになり、いよいよ舞楽奉納になる(午後1時頃) 舞楽の一番は「振舞(えんぶ)」であり、舞台を祓い清める舞。 |
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2.候礼(そうらい) 稚児4人。指を狩衣から出さず、剣印を結んだ指先で袖先を伸ばす、静かで優雅な舞。 3.童羅利(どうらり) 稚児1人 最年少の稚児による短い舞。 最後に「あかんべ」をする。 |
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4.地久(ちきゅう) 稚児4人。 報道の傲慢さにガッカリ。 水舞台正面にカメラをどっしり据え付け、傘を差し、舞台に見入る観客の目線を断ち切り、景色を独占し続ける非常識。 |
5.能抜頭(のうばとう) 大人一人 手に撥(ばち:武器のたとえ)を持ち、軽快にしかし、体力の要る力強い舞である。 |
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6.泰平楽(たいへいらく) 稚児4人 出鉾の舞、徒手の舞、鉾の舞、太刀の舞と長時間にわたる舞。 |
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7.納曾利(なそり) 大人2人 前半は「破」の舞。後半は「急」の舞 雌雄の竜が楽しげに舞遊ぶ「双竜の舞」と呼ばれる 8.弓法楽(きゅうほうらく) 9.児抜頭(ちごばとう) |
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10.輪歌(りんが) 稚児4人 「前の手」、「肩の手」、「腰の手」の舞。最後は1列になって楽屋に向かう。 稚児の最後一人は楽屋に容易に戻れない。何度も舞続けさせられるのだ。稚児は半泣き状態になる。 このときすでに幕際には陵王が座して出を待ちかまえているのだ。 |
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11.陵王(りょうおう) 4時間半をかけて10種の舞が披露された午後5時半。いよいよ陵王の登場。 いつのまにか人があふれ、輪歌の最後の一人が楽屋に入ると同時に、瞬時に楽が変わり、緋の色の「陵王」が飛び出てくる。 天候に恵まれていれば、夕日(アマテラス)の差し込む時間、頭部に竜をつけた吊り顎の陵王面、赤熊(しゃぐま)を被り緋チリメン狩衣に緋緞子の装束だ。 橋懸りに現れると、境内騒然となり、「りょうお~う」の声があちこちからあがる。 |
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動きは緩やかに見えるが、まるでスクワットを繰り返すような中腰。伸び上がった状態でも足が交差しており生半可な平衡状態ではない。 左足を踏み込み、中腰に屈んだ状態で、左から右をねめまわすようにゆったり向きを変え、ときに「烏跳び」や「千鳥掛け」などの舞となる。 舞台中央でおこなう「日招きの舞」は、太陽が沈まぬような呪術的な意味をもつともいわれ、観客の目が陵王に集中し、神がかりのようになる。 たんたんと繰り返される舞に引き込まれるうちに、あたりは暗くなり、橋懸りに群がる人たち。 |
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早く舞を終わらせてあげたいような気持ちと、まだまだ陽は落ちないからもっと続けてくれという混濁した状態に陥る。 舞初めてから1時間が経過した午後6時30分、陵王が橋懸りを飛び越える「走り込み」を一目観ようと観客は殺到。 橋懸りの先に待機する氏子総代に抱きかかえられるように跳び越え、倒れ込む陵王。 神がかりが落ちた抜殻の肉体のようだ。 直後、楽は急テンポになり、橋懸りが取りはずされ、祭りは終わりに向かい動き出す。 能生白山神社春大祭「陵王」の舞をもっと見る→ 能生白山神社春大祭 舞楽についてもっと見る→ |
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神霊還御(しんれいかんぎょ:御旅帰り。神様がおかえりになること) 橋懸りがはずされると、御旅所にある3基の神輿はすごいスピードで拝殿に担ぎ込まれる。神様がお祭りを終え還られたのだ。 その後、神輿は外へ持ち出され、拝殿前で上下に揺すぶられ、さらに、御旅所の前で再度上下に揺すぶられる。 無事に祭礼が済んだことの歓喜の爆発だ。稚児も担ぎ出され両手をかかげ喜びを表す。 3基目の神輿は御旅所の前で、50回に及ぶ上下動を果たし、どよめきと拍手が湧きあがった。 陽は落ち、観客は余熱を含み、帰途に着く。 能生白山神社春大祭「神霊還御」をもっと見る→ 能生白山神社HP→ |