2010.07.04 バタバタ茶
バタバタ茶とカワラケツメイ
糸魚川地方に伝わる江戸時代からの風習で、近所の人が集まり毎日のようにバタバタ茶をたて、
茶会を開いたそうです。戦後はその風習も少なくなり、現在では保存普及の活動のみとなり、
生活からは離れてしまいました。
私も戦後生まれですが、近所のバタバタ茶会に連れられて行き、飲んだ記憶があります。
幼い記憶は、しょっぱい泡だらけのお茶でした。
ふるさとの文人、相馬御風(そうまぎょふう)は「野を歩むもの」という本のなかでバタバタ茶の
由縁を紹介しています(昭和13年11月)以下に抜粋してみました。
『
私たちの街に昔からタテ茶といふ珍しい風習がある。
それは一名バタバタ茶ともいつてゐる。晩茶を煮出して、それを天目風の茶碗に汲み、少量の
塩を加味して、茶筅を以って泡立てて飲むのである。
…
茶碗はもとは出雲の布志奈焼に限られてゐた。卵色の釉のかかった感じのいい茶碗で正面に
宝珠の刻印が捺してあつた。刷毛目などの気の利いたものもあり至極風雅な茶碗である。
…
この町ではどの家でも毎日1、2回はこのタテ茶を立てて飲む。茶うけは沢庵漬でも、菜漬でも、
煮しめでも、ゆで豆でも何でもありあはせで間に合す。茶をたてるのは婦人がおもであるが、飲む
ものは老若男女を問わない、そして一人で何杯でも飲む。少量の茶を泡立てて飲むのだから、胃に
入るのは空気の方が多いわけで、何杯でもたて続けに飲めるわけである。
これはいかにも地方民間習俗としては雅趣豊かな行事であるが、一方から考えると自然に一種の
補助食料の役目をなしてゐる。
この風習はもとは出雲から伝はったものである。出雲では松平不昧公の頃それが始められた。
そしてそれは一方に布志奈焼陶器の販路拡張策でもあったらうし、又大茶人であった不昧公の風流
趣味普及でもあったらうが、今一つは明らかに食料政策からであった
…
いかさま徳川期の或時代には、百姓は苛斂の為一日に一度しか飯が食へず、あとは粥のやうなも
ので日を送り、足らぬところは茶を飲んで腹をふさげてゐたといふことが、民間省要といふ本に書
いてあるさうである。
…
』
このようなタテ茶の風習は、全国の中でも
・富山県朝日町のバタバタ茶
・島根県のぼて茶
・沖縄県のブクブク茶
にしか残っていないといいます。
バタバタ茶が見直されるようになり、主原料である「カワラケツメイ」の地元での植樹、生産、加工、
乾燥保存が活発になっています。
河原決明、マメチャ、ネムチャ、ハマチャとか様々な名前で呼ばれる薬草です。
強壮、利尿、鎮咳薬として脚気(かっけ)、腎炎、黄疸(おうだん)、偏頭痛、慢性便秘、夜盲症、
インポテンツなどの効用があるといいます。
「カワラケツメイ」の詳細は下記URLでご確認下さい。
イー薬草・ドット・コム
2017-03-27 13:21